Baicaiの欠片

なんちゃっ哲学はじめました

老子的発想で考える - 良い政治ってどんな政治?

 第24回参議院議員通常選挙が近づいてきました。街頭演説や選挙カーなどを見ると、「あぁ、選挙の季節がやってきたなぁ」なんて思いますね。この時期になるとテレビ番組でも選挙特番などが組まれ、「投票率の低さが…」「みんな選挙に行きましょう!」みたいな論調が展開されます。

 こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、個人的意見をいえば現行の状態で ”無理をして”まで選挙に行く必要はないかなとも思います。「選挙は義務!」という方もいらっしゃいますし、「民主主義の実現のために投票を」という議論もわかります。

 でも、投票率100%の民主主義がいわゆる”良い政治” と言えるのでしょうか? 今日は老子を踏まえながら”良い政治”について考えてみたいと思います。

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  10_GO!GO!選挙

「せーんきょ、せんきょ! 明るいせんきょー♪」

「またプチ懐かしいものを持ってきましたね…。最近の若い人はこれ知ってるんでしょうか?」

「選挙権が18才に引き下げられたことだし、若い人に向けてまたこういうのを作らなきゃ! 良い政治を実現するためにみんなで選挙にいこう!」

「投票を否定するわけではありませんが、選挙というとなんだか”高い投票率=良い政治”という論調が目立ちますね。そもそも良い政治って何なんでしょう?」

「みんなが投票したってことは民主性が高いってことで良い政治ってことなんじゃないの?」

「はたしてそんな単純なものなのでしょうか? 今日は良い政治について考えてみたいと思います」

 

  https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3a/Lao_Tzu_-_Project_Gutenberg_eText_15250.jpg/200px-Lao_Tzu_-_Project_Gutenberg_eText_15250.jpg老子 - Wikipedia

「太上下知有之。其次親而譽之。其次畏之。其次侮之。信不足、焉有不信。悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然」

「太上は下これ有るを知る。その次は、親しみてこれを誉める。その次はこれを恐れる。その次はこれを侮る。信たらざれば、不信あり。ゆうとしてそれ言うを貴ぶ、功成り事を遂げて、百姓は皆、”我自らしかり”と言う」 

参考:老子 第十七章 太上は下これ有るを知るのみ | ちょんまげ英語日誌

「うわ! またなんか変なおじさん出てきたよ!!」

「これは老子先生が理想の政治について語った部分です」

「あ、もうそろそろ選挙に行かなきゃ!」

「投票日はまだ先ですよ!!」

「アイヤーシェシェザイチェン!」

「分かり易いように短くしてみましょう」

 

「太上下知有之」

「太上は下これ有るを知る」

「もっともよい政治の状態とは、民衆がそういうものがあるということを知っているだけで無関心の状態である」 

「なにこれ? みんなが政治に無関心なのがいいってこと?」

「そう、選挙なんて行かなくてよいのです!(ばばーん)」

「そうか! 選挙なんていかなくてよかったんだ! 日曜日を満喫しよう!」

「あ、ちょっと! なんでそうなるのか考えましょうね…」

 

「其次親而譽之」

「その次は、親しみてこれを誉める」

「2番目は、みんなが「良い政治だ」って誉めている状態である」 

「誉められる状態が二番目…?」

「みんなが目指しているのはここですね」

「良い政治を目指して選挙に行こう!って話だもんね」

 

「其次畏之」

「その次はこれを恐れる」

「3番目は、強権政治である」 

「現在の安倍政権は強権政治である! 良い民主政治を実現するために野党に入れよう!」

「何が嘘で何がホントかわかりませんが、野党はそう言ってますね」

「じゃあ、今の日本は二番目と三番目の間ぐらいの状態なのかな?」

 

「其次侮之」

「その次はこれを侮る」

「一番悪いのは、政治なんて馬鹿みたいと思われている状態である」 

「あれ? これが今の日本に近い気がしてきた…」

「だから、選挙に参加してもらって少しでも政治に関心を持ってもらおうとしているのかもしれませんね」

「俺たちが頑張ってるのをもっと見てくれよ!って言ってるようなものか」

 

「信不足、焉有不信」

「信たらざれば、不信あり」

「真心を持たない政治家に民衆は不信を抱くものだ」 

「まぁ、政治家が信用できないと政治も信用できないよね」

「じゃあ、真心を持った政治家ってどんな政治家なんでしょう?」

「そりゃ、立派な経歴を持ってて、マメで庶民的で、笑顔が素敵な…?」

 

「悠兮其貴言」

「ゆうとしてそれ言うを貴ぶ」

「ゆったりと落ち着いていて軽々しく言葉を発しない」 

「”ゆったりと落ち着いていて軽々しく言葉を発しない”のが良い政治家?」

老子先生はそう言ってます」

「でも、こういう人は選挙に落ちるんじゃない…?」

「今の選挙制度だとそうなるんですよね…」

 

「功成事遂、百姓皆謂我自然」

「功成り事を遂げて、百姓は皆”我自らしかり”と言う」

「だから、政治が成功しても民衆は”俺たちが頑張ったから社会が良くなったんだ”って言うんだ」 

「真の政治家はアレコレ口出しをしないで、そっと民衆を後押しするような政治を行うので、民衆は政治が良いとか悪いとかなんて言わないのです」

「だから、民衆が無関心なことが最も良い政治だってことか」

「政治に関心があるってことは、裏を返せば現状に不満があるってことでもありますからね」

「「政治?テキトーにやっててよ」って言われるのが一番だとしたら、投票率が低いほうが良い政治が行われているってことになるよね?」

「様々な要因がありますから断言してしまうのは危険ですが、そういう考え方もあるってことは考えておいた方が良いと思います。もちろん現状に不満があるから投票しよう!って行動も大事ですね」

「大事なのは投票することじゃなくてちゃんと考えることってことかぁ」

「果たして投票率が高いことが本当に良い政治に繋がるのでしょうか? 民主性が高いことが本当に良い政治に繋がるのでしょうか? そもそも良い政治ってなんなんでしょう? そういうことを考えていかないと本当に良い政治なんて実現しないと思うのですよ」

 

 おしまい

 

参考文献

マンガ 老荘の思想 (講談社+α文庫)

マンガ 老荘の思想 (講談社+α文庫)