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Baicaiの欠片

なんちゃっ哲学はじめました

書評 『哲学の先生と人生の話をしよう』 國分功一郎

 哲学の先生と人生の話をしよう

 さて、書評『國分功一郎-哲学の先生と話をしよう』です。TV番組「哲子の部屋」で國分功一郎にヤラレてから悔しくてその足跡を追いかけている私です。今回は息抜きにさらっと読めるこちらを手に取りました。

 本書は帯に”「哲学は人生論でなければならない!」『暇と退屈の倫理学』の著者が挑む初の人生相談”と書かれているとおり、週刊メールマガジンメルマガ・プラネッツ」で連載された人生相談をまとめたものになります。

 読者から寄せられたお悩み相談、國分功一郎がその「哲学」を活かし、ズバリ!お答え致しましょう! そんなちょっと斜め上からの目線をよく表している表紙絵だなぁと思いました。 

 それでは、始めに私の正直な感想をまず一言。「面白い。面白いけど、なんだこりゃ?これが哲学?」 以下詳細。

 

 本書は全34の人生相談に國分功一郎が一つ一つ丁寧に回答する形で構成されており、相談内容によって3つの章に分けられています。各章のタイトル / サブタイトルはこんな感じ。

1.愛、欲望、そして心の穴

    / 失業の救済はしならないが、個人の救済は勉強だ!

2.プライドと蔑みと結婚と

    / ダダダダッ、ダッダダ

3.仕事も情熱も相談も

      / 反革命の思想こそがやさしさを… 

 私はメルマガ・プラネッツを知らないので、どのようなイキサツでこの相談が応募されたのかは分からない。が、タイトルを見て分かるとおり各々の相談内容は”哲学”とはかけ離れたものだ。そして、國分功一郎の回答もあまり”哲学”をしているフウはない。

 

 これは内容を調べずに著者買いをした私に責があるのだが、読み始めの感想は『心理学の先生と人生の話をしよう』の方がいいんじゃないの?と思った。というのも、國分功一郎は相談者の相談をストレートには受け止めないのである。

 

 彼は飛んできた矢文に対して、文を読まずにまず「この矢はどこから飛んできた!?」と探りを入れるのだ。この裏を探るようなやり取りが、私には哲学というよりは心理学に見えて違和感を覚えたのだろう。もちろん、話の内容は面白い。人に勧めたくなる本である。私自身も救われるような思いをする部分もあった。

 

 そんな感想を持った私だったが、最後にドンデンガエシが待っていた。この本はやはり「”哲学”の先生と人生の話をしよう」であったのだ。あとがきで國分功一郎はこのように語ってくれた。 

 自分が相談相手の文面を、まるで哲学者が書き残した文章のように一つのテクストとして読解していることに気がついた。

 哲学者の文章を読むときには、哲学者が言ったことだけを読んでいるのではダメなのである。文章の全体を一つのまとまりとして眺め、そこを貫く法則を看破し、哲学者が考えていたが書いていないことにまで到達しなければならない。

哲学の先生と人生の話をしよう (あとがきより)

 

 ヤラレタ。またしても浅はかな私はやられてしまった。なるほど。そう言われて読み返してみれば、この本は確かに”哲学”をしているのだ。

 私は最初、この本を相談者の相談に対して”哲学的な回答”をする本だと思っていた。しかし、それは私の思い違いだったのだ。この本の正しい姿は、相談者の”相談内容を哲学し”、それから國分功一郎が回答する本だったのだ。  

 

 そして、自らの知見を活かし真摯に回答する國分功一郎には頭が下がる。この本を読んだ今、私も同じように他者の相談を受け止めることが出来るだろうか。私の人生哲学ではまだまだ及ばない所だ。

 ちょっと自分語りが過ぎた…。最後に國分功一郎の哲学感が少し現れた下記部分を引用して、本書の感想を終わりにしようと思う。

 

 私自身は必要があって哲学に取り組んだのである。そして人生における難問に立ち向かう上で重要な認識を私は哲学から得た。私にとって哲学は人生論であることと、哲学が自然や社会や政治についての重要な知見を与えてくれることとは少しも矛盾しない。

哲学の先生と人生の話をしよう (あとがきより)

 人生に迷った時、困難に立ち向かう時、人は誰しも自らの人生哲学でそれを乗り越えていかねばならない。でも、心にまだ少し余裕がある。そんなときは哲学の大先輩を訪ねてみるのも良いのではないだろうか。彼らはきっとあなたに少し不思議な指針をくれるだろう。

 

蛇足… 

 蛇足として、この本の残念な部分を一つ。

 この本は確かに哲学をしている本ではあるが、哲学書ではない。面白い本ではあるが、何度も手にとって読みたくなる本ではない。人に勧めたくなる本ではあるが、自分の本棚にずっと置いておきたい本ではない。残念ながら本としてはちょっと存在が軽いのだ。

(え?大学とは何か?の続き…?人生にはちょっとした気晴らしが必要なのだ!)

哲学の先生と人生の話をしよう

哲学の先生と人生の話をしよう